ギョーザ考   #2

アオヤナギ家は満州から引き揚げてきた。引き揚げ船で天津の港から帰国したのである。
今は亡き義母の、よく整理されたファイルの中にその時の乗船票がある。それを初めて見せてもらった時、我々の家族が歴史の一ページに、その痕跡を確かに残していることに胸を打たれた。

天津出身の元留学生が、「天津のこの街、この通りは、今でもあります。一緒に行きましょう。」と言ってくれた。戦後60年以上経ち、今なお、家族が住んでいたその街区が残っているなんて素晴らしいが、まだ行けていない。

アオヤナギの義父は、在満州の日本商社に勤めていたらしい。その頃義母は、中国人の今で云うお手伝いさんから日常的に中華料理を学んでいたと思われ、その内のギョーザの作り方を私は教わった。

豚と牛の合いびき肉(あるいはそれぞれのミンチ肉を合わせて)に、生姜のみじん切りを加え、ごま油と醤油で味付けをしておく。肉に味が浸みている間に、白菜あるいはキャベツとニラを
それぞれみじんに切って、水気を絞って加え混ぜる、というのが大体のところだった。

味付けに関して、義母が言ったことで心に残っているのは、「(混ぜ合わせたあんの味見をすることはできないが、)味は匂いでわかる。」というひと言であった。

混ぜ合わせた食材を、生姜とごま油と醤油の香ばしさに馴染ませ、うまく一つに纏められれば極上のギョーザのあんが出来上がる、と私は解釈していて、毎回そこを目標にしている。

コメント

  1. 読ませていただきました。

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    1. 読んでくれてありがとうございまーす。
      全部読んでくれたら嬉しいです。

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  2. 同じく見ました

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  3. ありがとうございます!またの訪問、よろしくね。

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